●●●● No.87/win様 ●●●●




「おい、海軍の船変じゃねーか?」
確かに、海軍の船は変だったが、さっきとは違う変だった。
「しゃべり声も聞こえないし・・・。それになんだあの黒雲みたいなの?」
GM号は少し様子をみる為海軍の船に近づいてみた。
すると、海軍達は全員倒れていた。
「どうした!何があった?」
怪我の治ったルフィが一目散に船に駆け込もうとしたが無理だった。
あたりは毒ガスが充満していてとてもじゃないけど近づくのは容易なことじゃなかった。
チョッパー・ウソップ・サンジはすぐ海軍の介抱に向かった。
「おい、大丈夫か?」チョッパー。
「わ、私は大丈夫ですけど・・・」海兵。
大丈夫ですけど?何かあったのだろうか?ゾロの不安は的中した。
「たしぎ曹長が・・・、しびれ薬をかがされて・・・。何者かに連れ去られました。」
その言葉を聞いて、
「おい、じゃあてめえはなにやってたんだ!」
と、サンジが怒った。
「私達は毒ガスを吸わないように・・・・。」
海兵が喋っている途中だった。いきなりゾロがその会話をさえぎり
「おい、そいつはどこへ行った?」
と、場所を尋ねた。
「あ、あっちのほうに・・・。」
と、海兵が言うのを聞くとゾロはその方向に向かって一目散に駆け出した。
「おい、俺も。」
とサンジが行こうとすると、ルフィが止めた。
「ゾロが助けたいって言ってるんだ。俺たちはゾロを信用しよう。そして、今は海軍を助けなきゃいけない。」
「そうだ。それに、さっきの海軍の言葉になんでお前がキレてんだ?普通ならあそこでキレるのはゾロのはずだ。」ウソップ。


そのころ、
〔う、動けない・・・〕
たしぎはしびれ薬のせいでまだ体が動かなかった。
「こいつは確か、あの海賊狩りのゾロの大切な女だとか。町で得た情報が本当なら、
この女を助ける為にゾロは助けに来るはずだ。」

〔えっ!そんなのいやだ〕
たしぎは本気でそう思った。ロロノアのような男に、さっき喧嘩してあんなひどいことを言ってしまった人に助けられても、
どういう顔をしていいかわからない。
〔だからスモーカーさんも止めたのかもしれない・・・〕
本気でそう思った時だった。いきなり、たしぎの首もとにナイフがつきつけられた。
「ロロノア・ゾロが来ないなら、この女も用無しだ。」
と言って、たしぎを刺そうとした。
その瞬間。たしぎをとり抑えていた、男の背中が斬られた。
ゾロが、ロロノア・ゾロが斬っていた
「みね討ちだ。次は本気で斬る。」
まさか、本当に来るとは男は予想してなかったのだろう。斬られたところからは
血が噴き出していた。
〔助けに来た・・・!〕
たしぎは胸がつまる思いだった。あそこまで、ひどい事を言った自分をロロノアは助けに来てくれた。
「みね討ちだというのに、よくここまで俺を傷つけられたな。『海賊狩りのゾロ』」
男は淡々と喋る。まさか、ロロノアと縁があるのだろうか?たしぎはそう思った。
その時、男の顔を始めて見た。髪は短くひげも生えている。だが、とても細くするどい目をしていた。
「わかってないな。お前。」
ロロノアはそんな男の雰囲気にも気付かず喋っていた。
「『海賊狩りのゾロ』は金を貰うために人を斬った。だが、」
そこで一息入れると、少しためらって、

「ロロノア・ゾロは大切なものの為に剣を振るうんだ!」

その言葉で、あたりがしーんと静まり返った。
「ほう・・・。では、ロロノア・ゾロ。勝負!」
男がたしぎを突き飛ばし、刀を抜刀。
―
――
キーンという刀が飛ばされた音がした。見ると、男の刀は空中を舞い地面に突き刺さっていた。
「お前の、負けだ・・・!」
有無を言わない迫力に圧倒され男は逃げていった。


「からかって、悪かった。」
たしぎを起こした後、いきなりゾロがあやまった。
「本当はちゃんと、今日がバレンタインデーだって知ってるんだ。」
「そ、それはどうも・・・」
一応謝ってくれてうれしいのだが、何か忘れているような気がする・・・?
「あっ!そうだ!」
たしぎは肌身はなさず持っていたチョコを、今渡す事にした。
「こ、これ俺に?」
「それ以外ここに、今だれがいるんです?」
・ ・・・・・・・・。(///)
受け取って、ゾロは
「中を見ていいか?」
と聞き、たしぎがうなずくのを見ると開けてみた。
中の桃型(ゾロにはそう思えた)チョコは、真中からぱっくりと2つに割れていた。
〔失敗でした・・・。あの人に連れて行かれなければこんな風には・・・〕
たしぎは、心の中ですごーく反省した。と、言うよりこんなに料理がへただと初めて実感した。
〔だから、スモーカーさんも止めたんじゃ・・・〕
いまさらになって、親心(?)を実感していた。
でも、ゾロはそんなたしぎのがっくりした表情を気にも止めず、
「この方が2人で食べれるだろ。」
と言って食べ始めた。おいしそうな顔で食べている。これだけで、うれしくなる。
だけど、もっとうれしいのは好きな人に
「たしぎ、ありがとな。」
と、言われると女の子って幸せになるから不思議です。今までの、嫌な気分も全部吹っ飛んでしまいました。


――――――ぎ
―――――しぎ
――――たしぎ!
スモーカーの声でたしぎはふっと我に返った。
ここは・・・、どこだろう?
見てみると、船内のベットの上だった。
〔あ、そっか。私あれから意識が薄れて・・・〕
「ここまで、お前のことを、ロロノア・ゾロが運んで来てくれた。毒ガスにやられた俺達は、麦わら海賊団が介抱した。
あいつらは、先に出航した。こっちの船はログがたまってないから出航するのは無理だ。」

そばで、海軍たちが噂していた。
「大佐エターナルポーズがあるのに追わないのか?ルフィ一味もアラバスタへ行くんじゃ
無かったか?」
「馬鹿。こんな状態でたしぎ曹長がルフィ一味を追えるか?」
「ああなるほど。」

〔ああそっか・・・。ロロノアが私を助けに来てくれて・・・〕
徐々に記憶を取り戻して行く。
でも、
「ありがとな。」
と、言われた後の記憶が全然ない。
1つだけ残っているのは、あまーいチョコレートの味だけだ。
〔私、いつチョコ食べたんだっけ・・・〕



「ゾーロ。」
「何だ。」
ふいに、ゾロはナミに呼び止められた。ここはGM号の船内。ナミとビビ&カルーが戻ってきたので出航した。もう、4:00だ。

「チョコレート、貰ったでしょ。」
「な、なんでわかるんだよ!」
「ふふ。女のカンよ。もしかして、チョコをくれた相手は、よくあんたが話をしているたしぎさん?」
女のカンはこわい。その通りだったので、ゾロはたてに首をふってしまった。
「チョコを貰うだけじゃなくて、なんかしてきたでしょ。」
「うっ!・・・するどい!」
「じゃ、何してきたの?キスとか?」
(//////)つい、さっきの事を思い出してしまった。
たしぎが片方のチョコを食べ終わった後、
「こっちのも食うか?」
と言って・・・。