No.152/win様


After nine years ・・・―9年後の・・・―


グランドライン最後の島、「ラフテル」。
この島は、今でも学者たちの議論が飛びかっている謎の島だ。
議論で1番ひんぱんに出される内容は、ここにワンピースがあるという説。
1番有力な説だが、誰もいままで確かめる事が出来なかった。
海賊と、海軍以外は。

ラフテルで迎えた最初の夜。
皆(特にルフィ)がここにワンピースがあると思い、必死で捜索したが見つかったのは1つの紙切れだけだった。
その内容は、
(ここまで来た海賊――――まぁ、そんな奴はいないと思うが、いた時のために書いておいてやる――――は、主に世界に認められた海賊という事になる。ワンピースはなくともグランドラインを制した野郎たちだからな。だが、ワンピースはまだ手に入らない。この島のログは3日。3日後にはグランドラインではなく、秘境の場所への道が開かれる。そこをずーーーっと行った所にワンピースを残した。取れるもんなら、とってみろ。他に色々な伝説の地もある。それを見るだけでもいいかもな。あばよ。
海賊王,ゴール・D・ロジャー)

この、書置き(遺書?)を読み終えた後俺達はボゥッとしていた。
1番最初に反応したのはルフィ。
すぐに、ワクワクしているとわかった。
「よー――――っし!3日後だな!絶対行くぞ!・・・・・、なんていう名前だ?」
「これから行くところだし、これから名前ぐらい決めればいいでしょ。」
「そうだな、ナミさん。よっし!オールブルーが見つかるかもな。俺は行くぞ。」
「ふ〜ん、なんだか解からないけど、そこも世界の1つなら行ってみてーな。よし、行くか。」
「う〜、海の戦士の血が騒ぐぜ!俺も行く!」
それから、結局ナミがアラタの一件が終わってから、「10億Bを払えないんだったら、一緒にビビを連れていくわよ。」と言ってつれてきた(親に止められていたけど、本人が行きたがっていたんだから連れてきたらしい。本当か?)ビビも、
「いいですね、このまま行っちゃいますか。」
と言って答える。
まぁ、俺も
「鷹の目がいるかもしれねぇ。行くか。」
こうして、全員がいく事が決定した。

次の日、起きてみると海軍の船がそこにあった。
しかも、運悪くたしぎの乗っている船。
でも、スモーカーの話だと、
「ここまで来たと言う事は、世界に認められた海賊って事だ。だから俺たちも手出しは出来ない。」
つまり、俺とアイツは戦わなくてもいいって事になる・・・。

つまんねーの。

昼飯中、サンジが俺に話し掛けてきた。
「いいのか。」
「・・・・・。」
たしぎの事か・・・・。俺自身、なにも言えない。
これからも、ラフテルの先にある場所まで海軍――――たしぎは追いかけてくるもんだと思っていた。
アイツが追ってきて、俺が逃げて。
からかうとかそういうんじゃなく、結構楽しかった。

はっきり言って、敵じゃなかったら恋人同士になっていたかもな。

まぁ、空想だけで絶対無理な話。
「どうなんだって、聞いてるんだ。」
サンジと、話をしている事なんてすっかり忘れていた。
「別に・・・・、あいつがどうしようと・・・・。」
(俺には関係無い)
その一言をさえぎって、ウソップが話しに割り込んできた。
「誰も、あの女海軍のことなんて話してないよな。」
は?
「うんうん。俺は、たしぎさんがどうなるとか、全く言ってないが。只単に、お前全く昼飯取ってねぇけど、いいのかって。」
「・・・・・、まぁ、そうだよな。」
・・・・・・。
「でも、何でたしぎさんの事を?」
「まさかお前、そんなに気になっているのか?」
「そんなわけねぇだろ!」

「でも、これが最後なんだからな。もう、この機会を逃したら二度と会えないかもしれないんだぞ。」
ウソップが言ってきた。
「お前だって、あの『お嬢様』といつ会えるか解からないっていうのに、こんな海へ飛び出してきたんだろ。」
「そんな事知るか。」
奴にしては、ずいぶんとしっかりした口調だった。
「そんな事怖がっていたら、いつまでたっても俺は夢をかなえられない。夢・やりたい事のために
怖い事にぶつかっていく。それが勇気だろ。」
「・・・・・・。ふーん」
「それでいいって、カヤも言ってくれたしな。」
その言葉が終わると同時に、サンジの声がした。
「ゾロー!お前メシ抜きな。」
「お前、ちょっと待て!!」


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こんなカタチで・・・・、私とあの人との『追いかけっこ』が終わると思わなかった。
ルフィ海賊団に『ラフテル』で会った日の夜。
海軍船は静かだ。
<もう、深夜ですものね・・・・>
月明かりが、はっきりしている。雲ひとつない天気だ。
「おだんご、食べたくなっちゃうな・・・・。」
明日には、ルフィ海賊団を捕まえられなくなる―――ロロノアから私は離れる事になってしまうと言うのに、私は妙に冷静だった。
<考えたくないだけかも知れませんけど・・・>
空は、いつまでも暗かった。
<何で私さっきからここでいつまでも空を見上げているんだろう・・・・?>
こんなことをやっていても、ロロノアが来てくれる訳じゃないのに・・・・。

昔、お母さんに教わったんです。
[女の子はね男の人を好きになったら、その人に負けたって事になるのよ。]
[え――っ!それじゃ、女の子って、損だよ―――!ずるい!]
[でもね、その人に会うまで、会う時をず――っと待っていなきゃいけないの。
だから、女剣士は強くなきゃいけないのよ。]
私は、剣でも恋でもあの人に負けていたんですね・・・・。

「・・・・おい・・・・」
それから、15分ぐらいゆっくりしていたら、そんな声がした。
<ロロノアの声だ・・・・!何で、聞こえるの・・・・?>
「・・・・、おい。たしぎ、いるか?いたら返事しろ・・・。」
「いますよ。何ですか?」
「ちょっと、話したい事がある。ついてこい。」
そして、私は海軍船を降り、ゆっくり彼について行った。

月明かりの中、私と彼は海岸沿いに歩いていった。
そのまま、無言で歩いていくといきなりロロノアが私の後ろから目隠しした。
「きゃっ!な、何ですか、いきなり!」
「あと、もうちょっとこのまま歩いていってくれるか。」
言われたとおりに歩いていく。
「もういいよ」と言われて目を開けると、そこには綺麗な海岸が目の前に広がっていた。
「うわぁ・・・・」
砂は、白くてさらさらしている。水も、今の夜の空の色が写って着色されているとは思えないほど透き通って・・・、微量ながら虹色に輝いているっていうのかしら・・・・。
「すごいです!私こんな海初めて見ました!」
「明日、ここから『秘境』へと出航するらしいんだ。」
「えっ・・・・」
ちょっと、ズキッとした。
この綺麗さに、心を奪われてすっかり忘れていた・・・・。

「明日旅立つ前にお前に言いたい事があるんだ。」
「はい」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
沈黙が続く・・・・・。
「お前、確か男には絶対負けたくないって前言ってたよな。」
<なんか、時間がかかったけど・・・>
「ええ」
「今でもそうなのか?」
「・・・・そうですね。」
<ある、1人の男性を除いて・・・>

「じゃぁ、今度俺に会う時までに、男を超えてみろ。」
「えっ・・・。」
「絶対に負けたくないものは超えていく。それしかねぇだろ。」
<そっか、私いままで男に勝つことばかり考えていて、全く考えを変えようとはしなかったっけ・・・・・>
「俺がくるまで、結構かかるだろうからゆっくり気楽にやってろよ。」
「ええ・・、はい」
「絶対に、俺以外の男には負けるなよ・・・。」
「『鷹の目の男』には勝っていいんですか?」
「んな訳ねぇだろ!」

「話を元に戻すが、だから絶対俺以外の男には負けるなよ!勝負以外でもな。」
「・・・・、どういう意味ですか?」
「えっ、お前しらねぇのか?女は男を好きになったら、そいつに負けたって事になるって話だ。」
「し、知ってるけど、つまり・・・・。」
「これ以上は言いたくないけどな、つまり俺以外の男を好きにならないでくれ!・・・・・」
そこで、彼は言葉を切って、
「俺が・・・・、見ててムカツクから・・・・・。」
搾り出すように言ってくれて・・・・・、私は嬉しかった・・・・。
「は、・・・はい。でも・・・。」
そこで、今までずっと私に向かって喋っていたゾロが初めて私の方を見た。
「今、私1人の男の人に負けてるんです。気が強くて、かっこよくて、そばにいるとワクワクする、世界1の人に・・・。」
どんどん、自分の声が小さくなっていくのがわかる。心臓が脈打ってる。ほっぺたと目の中間のあたりがヒクヒクしている。
「そ・・・・・、そいつはどこのどいつだ。」
ゾロが、ちょっとショックを受けたらしくビクッとしながら言った。
私は、その言葉が、妙におかしいのかうれしいのか、よくわからないうちに涙を出してしまって。
止めようと思っても止まらない、この液体をぬぐいながら私は言った。
「あなたに、決まっているでしょう。私にとって、世界1の剣士です。ロロノア・ゾロ。今度会う時までに、あなたにとって世界1の女になってますからね。」


あたたかい手。
新朗は、新婦の頬にその手をあてた。
そして、引き寄せるようにしてキス―――口をつけた。
永遠に、2人の心が離れないように、強く強い口付けをかわした。
そして、1度離れてから新婦は新郎の背中に細い手を絡めた。
そして、どちらからともなく、島の中心の林の中に小屋があるのを知ると、そこで2人で寄り添って眠りについた。


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次の日――――、ラフテルからの出発の日になった。
「行くぞ―――!野郎共!」
「おう!」
ルフィ,サンジ,ウソップが向こうで盛り上がっている。
ナミとビビとチョッパーは船の荷物整理をしている。
俺はというと・・・・、昼寝の体勢にはいっている。
昨日、あんなに緊張したしな。
自分でも、「何言ってるんだ、おれ」って気分だったし・・・・。
海軍の奴らは、俺たちが出てから1日たった後、別ルートで帰るらしい。
・・・・・、日差しが暖かい、うつらうつら・・・・・。
バコ!
「もう、ゾロ!あんた手伝ってよ!あたし達で頑張るにもほどがあるんだから!ルフィ達もやっと手伝ってくれるようになったのに、あんた何ねてんのよ!」
へいへい、と俺は言ってあいつの後について行った。
「あんたはここで仕事しててよね!30分たったら迎えに来て出航するから!」
ここで、仕事って・・・・、なんにもない所で何をしろっていうんだよ、ナミの奴。

「ゾロ」
うっ、と思い振り返ってみるとそこにはたしぎの顔があった。
「どうして、ここにいるんだ・・・。」
「よくわからないんですけど、つれてこられちゃって・・・・・。」
≪30分たったら迎えに・・・・・≫
そうか、そういうことかナミの奴・・・・。
「えっと・・・、ゾロ。ちょっと聞きたい事があるんですけど・・・・。」
「何だ?」
「帰ってくるって・・・・、いつ頃にですか?」
「なんで、そこまで言うんだ!?」
「ちょっと、具体的に言わないと、不安なんです!」

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<信じているけどこの人は――――
もしかしたら、
私の下から離れて―――
どこか、遠くへ行って、
私には2度と会えない存在になってしまうような気がして・・・・・
とても怖い――――――>
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コイツが、こんな顔して、
俺に訴えて、
まるで、あの日の
アイツそっくりじゃねぇか・・・・・。
「・・・・・、お前が30歳になるまでに、必ず帰ってくる。」
「・・・・・・!」
「約束だ!」
「ええ・・・・・!」
「約束の印に、これもってろ。」
俺が取り出したのは、1枚のいつも戦闘の時につける黒いてぬぐい。
「じゃぁ、私も・・・・。」
たしぎは俺に、時雨についている金色に光っている紐をわたしてくれた。
「泣くなよ。」
人差し指で、額をツンと突くと、「泣いてないです」、そう言って顔を下に向けた。
かわいいやつだな・・・・、ほんとに。
俺が惚れるのも、訳ねぇよな。
たとえ、くいなに似てなくても。


船は、出港した。
これからの未来と、夢をのせて。
いざ、秘境へ―――――!





そして―――9年後、ローグタウン。

 

- END -