No.204/砂糖増量中。様


抱きしめられるのが好き。


 抱きしめられるのが好き。
ちょっと抵抗したところを、強引に引き寄せられるのが好き。
その時のあなたの太陽の匂いが、たまらなく好き。

その日海は静かでグランドラインらしからぬ穏やかさだった。
甲板に立って、そんな海の様子を見ていると、後ろから腕が伸びてきた。
まるで胸の中に閉じ込めるみたいに、私を包んで甲板の手すりに置かれる手。
嬉しくなってしまう。

「こんな静かな海もいいですよね」
「ああ」

もう、まるで会話が続かないんだから。
でもいい、いいの。
今日は久々二人きり。ログが溜まるまでの時間、みんなは島に降りたから。
定石通り寝ていたはずのあなたは、みんなが船を降りてから、起きだしてきた。
あなたも二人の時間がほしかったのかな、と想像してみたりする。

だから、今日は私から甘えてみる。そういう気分だから。
そっと後ろのあなたに寄りかかって、あなたの胸に頭を預ける。
あなたはつむじに頬を乗せてくる。
寄り添って海を見るなんてね、こんな時じゃないとできませんものね。

「たしぎ」

名前を呼ばれると単純にときめいてしまう。

あなたの顔が下りてきて、こめかみ辺りに軽くキスを受ける。
顔を向けると今度は正面からキス。もう何度となく繰り返してるけど、その度に幸せ。
今度は私からあなたに。長身のあなただから、顎にキス。
こんなことあんまりしないのに、自然にできたのは、海が静かなせいかな。

「…好きです、ロロノア。好き」
「知ってる」

つれないんだから。
ちょっとすねてみせると、あなたの腕が私を抱きしめる。ああ、なんて幸せなんだろう。

「ロロノアは?」
「あぁ?」
「好きですか?私の事」
「…あぁ?」
「だって、いつも私ばっかり言ってます。私の事好きですか?」

抱きしめてくれる腕の力が増す。

「わかってんのに聞くなよ」

そう言ってあなたの唇が降りてくる。私の唇に重なる。もう、いつもこうなんだから。
だめ、今日は言ってもらうから。

「ロロノア、言ってください。言えないのは本当じゃないから?」
「…好きでもない女と、ただ海を見てたりしねぇよ」

肝心な言葉をかわして、あなたはそう言う。

「だめですってば。ちゃんと言ってください。…きゃっ」

急に私を抱き上げると、そのまま船室へ向かう彼。

「わーった、わーった。じっくり教えてやるよ」
「え!そんな、私はただ言ってほしかっただけで、あの!ねぇ、ロロノアってば!」

言いながら私は笑顔になっていく。あなたも軽く笑ってる。
そうね、二人だけの時間も限られてるものね、ここはあなたに従いましょう。

 

- END -