No.204/砂糖増量中。様


あったかくしてやるから。


他の人の事なんて考えないでね。
いつも私の仕種だけ思い出してて。

二人で稽古して手合わせして、そのまま自然な流れで船室に戻った。
今夜一緒にいれるのは稽古が長引いたから。だって夕食後に開始したから終わったのは夜更け。
もうみんなそれぞれバラバラになってる時間だった。
何も夜更けに稽古することはないっていう理屈はない。暗闇の戦いだってあるから、暗闇の稽古だってある。

「なんだ、まだ乾かしてんのか」

先にシャワーを浴びたのは私だけど、彼が船室に戻ってきた時にはまだ髪を乾かしていた。
お風呂やシャワーが早いのは男の人の癖なのかな?でも他を知らないから、ロロノアが早いだけかも
しれない。がしがしと頭をタオルで拭いている彼、もう髪は半乾きより乾いている。
拭き方の違いもあるだろうけど、やっぱり髪の長さの違いだと思う。

「そりゃあなたとは長さが違いますから」
「まぁな。ビビなんかあれだけ長いと一仕事だろうな」

むか。
取り止めのない、本当に他愛のない台詞。でもなんだかむかっときた。
比べられたわけじゃないのに、ただ”髪を乾かしているビビ”を想像したのかと思うと、むかっときた。
最近自分でも、心が狭いなぁと自覚しているけど、それでもむかっときた。

「私だって大変です!」
「はぁ?」

自分で自分の台詞に恥ずかしくなって、今までとは変わってごしごしと頭をタオルで拭く。
嫉妬、やきもち、逆恨み。ごめんなさいビビ王女。今だけだから。
こんな下らない、筋のないことは。

「…じゃあ乾かしてやる」

どうしてあなたはいつも、私を見抜いてしまうんですか?強がりもごまかしも、悲しい時も嬉しい時も。
今みたいにかまって欲しい時も。
かわいいと思ってくれてる?それとも、なんだこいつって呆れてる?

あなたの声は行動を起こす前の声。普段より少し低くなってるもの。

私からタオルを取って、そのまま彼は私をソファに押し倒す。
まだ冷たい髪を気にせず顔を近づけて、頬にキスをしてくる。

「か、髪がまだ、」
「乾かしてやるって言ったろ」
「こ、こんな状況じゃ乾きません!」
「大丈夫だ」

そしてあなたのキスは唇に。

「すぐあったかくしてやるから」

流されそうになるのを我慢して、あなたの下から這い出て私はまた髪を乾かし始める。
始めから素直に身を預けられない性格の私。恥ずかしいからっていうのもあるけど、本当は違うんだって
最近判ってきた。今もその理由にしたがってあなたに背中を向ける。
そんな私を背中から抱きしめてくる。

「…ロロノア!」
「別にいいじゃねぇか髪なんて。」
「よくありません」
「お前と二人ってことで理性飛びかけてんのに、お前いつもより薄着だし、石鹸の匂いなんて
させてんだ。その気にもなるだろ。」
「お風呂あがりなんだからしょうがないでしょ!」
「しょーがなくねぇ。その気にさせたんだから責任とれ」

もう、また強引なことを言う。私が一回逃げる理由がそれ。その強引さを味わいたいから。
逃げた所を引き寄せられるのが好きだから。可愛くないなと自分でも思う。
最初に「抱きたい」って言われた時も、聞こえなかったふりをした。もう一度言って欲しかったから。
確かめたいのか味わいたいのか、自分でも判らないけど、欲張っているのは判っている。
私の態度の変化に気付いてたあなたは、本格的に私を押し倒す。

「あったかいどころか熱いくらいにしてやる。髪、乾かすんだろ?」

そして私は夜朝にまたシャワーを浴びる展開になった。

 

- END -