No.204/砂糖増量中。様


じゃあ俺と同じだな。


きれいになりたい、できればあなた好みに。
きれいになりたい、あなたが私しか見ないように。
きれいになったら、私のことを考えてくれますか?。

サンジさんの特製オレンジシャーベットをお菓子に、女性群3人でお話中。
中央に置かれているのは、ファッション雑誌。

「美白って言っても、船の上じゃあねぇ」
「ですね。乾燥よりもテカリが気になるし」

とかいう会話をしている二人に、やや置いて行かれている私。

「もう日焼けは諦めるしかないわよね。でもキレイに焼かないと、それも汚くなるし」
「今使ってる日焼け止めって効きます?私はあんまりかなー。長袖も暑くてだめですよね」
「たしぎちゃんは日焼けはどうしてるの?」

聞かれて困った。何もしてない。
その答えに驚いた二人は、色々なスキンケア情報やメイク方法を教えてくれた。

私が何もしてこなかったのは、興味がなかったせいでもあると思う。
海軍には甘さは必要とされないし、汗をかくことを嫌がってたら速攻で除隊されてしまう。
海とメイクは相性が悪いと思う。。。
でも今の私は恋する乙女。ちょっと気を使ってみよう。

そう思って、ナミさんにファッション雑誌を何冊か借りて、甲板の日陰の長椅子で読んでいる。
知らなかった。世の中の女性はみなこんなに努力しているのです。

新鮮な気分で読みふけっていると、ふといい匂いがした。
顔を上げるとサンジさんが、紅茶を持っている。

「どうぞ。俺の特別調合の紅茶です。たしぎさんに合うように作ってみました」

なんてことを言いつつ手渡してくれる。きっと他の二人にもそれぞれ飲み物を渡しているはず。
早速一口飲んでみる。

「美味しいです」

この人はなんでも上手に作る。料理人だから当たり前なのかもしれないけど、すごいことだと思う。

「美味しいですか?良かった。隠し味が効いたのかな」
「隠し味?紅茶にも隠し味なんてあるんですか?」
「勿論。隠し味は俺の愛を数滴。最高の調味料ですよ」

私が赤面するのと同時に紅茶をいきなり取り上げられた。
驚いて振りかえるとロロノアが立っている。

「変なもん飲ますなよ、腹壊したらどうすんだ」
「なんで俺の紅茶で腹壊すんだよ、てめぇの料理じゃあるまいし」
「愛が数滴だぁ?下手すりゃ死にかける」
「間違ってもてめぇにはやらねぇよ」
「いるか」

言い合いながらロロノアは長椅子をまたいで座って、私を後ろから抱きしめた。

「やめろ。たしぎさんが病気になる」
「消毒してんだ」
「けっ」

サンジさんが行ってしまってもあなたは腕を外さない。まだ昼間なのにって思いながら、実はそんなに
嫌じゃないけれど。

「何読んでたんだ?」
「ナミさんに借りた雑誌です」
「ふーん」

ぱらぱらとページをめくりながら、ロロノアは大して目も通してない。

「ロロノアはどんなタイプが好きですか?こんなの?」
「いいや」
「じゃあ、こっち?」
「違う」
「教えてください。この雑誌で言うとどの方ですか?」
「乗ってない」

好みをリサーチするのは大切なことだと思う。どうせ努力するならあなた好みになるほうがいい。

「どういうのですか?」
「そうだな、髪は黒くて顎くらいの長さだな。眼鏡かけてて、爪は短くて、背はそんなに低くない。
そんでもって強情ですぐ赤くなるやつ。名前はたしぎがいい」

私は今が昼間であったことに感謝した。もし二人きりだったらきっと、あなたに飛びついてたから。

「…私の好みも教えましょうか?」
「おう」
「緑の髪を切り詰めてて、背は高くて筋肉に恵まれてて、声は少しハスキーで視線は鋭くて。
刀を3本使う剣士で、ちょっと強引な性格。名前は…ロロノアがいいです」

あなたの腕の力が少し増した。

「奇遇だな、ぴったりの奴を知ってるぞ。そいつの好みもお前にぴったりだ」
「私もあなたの好みに合う人を知ってますよ」
「そいつは俺をどう思ってる?」
「内緒です」
「知ってんだろ、言えよ」
「内緒ですってば」

あなたの口元が小さくふてくされたので、私は体を伸ばしてあなたの耳にそっと囁いた。

「あなたを好きって」
「じゃあ俺と一緒だな」

そこで二人で顔を見合わせて笑って、あなたは私の額に軽くキスをしてから、長椅子を立った。
その後姿を見ながら、きれいになりたいと心底思った私。やっぱり恋している。

 

- END -