No.317/n-yoshi様

「たしぎの日記 決意、その後」




泣くだけ泣いて、悔しがるだけ悔しがって、今回の失態を魂に刻みつけてやることで、なんとか落ち着きました。まだ少し、事実を受け入れることは辛かったけど、スモーカーさんに決意表明することで踏ん切りもつきました。コレでまた頑張れると思います。

ここ暫く、忙しかったり…ふさぎ込んでしまったり…で途切れてしまっていた日記を、今日からまたつけようと思います。例え辛いことがあっても、しっかりと事実と向き合って、前を向いて進むためにも。



昨日から訓練を再開しました。けど、だいぶサボってしまっていた所為でかなり鈍っていたみたいです。今日は朝から体中がギシギシと鳴っていました。でも、そんなことで負けてなんかいられません。私は決めたんです。私はもっともっと、強くなるんです。強くなってみせるんです。スモーカーさんにもそう宣言しちゃいましたし、ソレでなくとも、自分が…性別なんか関係なく…弱いってコトを見せつけられたんですから。

負けてなんか、やらない。負けたりなんて、してる暇、ナイ。



訓練再開から三日目。いつものメニューをしっかりやった、つもりだった、けれど…

ついさっき、シャワーを浴びていた時に、ただ何となくいつものメニューをこなしているだけだったことに気付いて愕然としました。今まで通りのメニューをこなしたところで、ソレは現状維持でしかないことに今頃気付きました。丸三日も無駄に…いえ、あの日から数えれば一週間もまるまる無駄にしていたことになるんです。

まだまだ弱く、カタチを保つことさえ困難になってしまった、とてもちっぽけな「私なりの正義」を貫くためにも強くなると決めたのに、今日までの訓練は、ただ「強くなるための努力をしている振り」でしかなかったんです。ただ漫然と、依然と変わらないメニューをこなしていただけなんです。
そのことに気付いた時、火照った体の汗を流すために熱いシャワーを浴びていたのに、背筋が寒くなりました。
なんだか、また落ち込んできました…



今日から訓練のメニューを増やしました。スモーカーさんや軍曹さん達のお世話もしながらですから時間的な部分では限界がありますので、内容をより濃く充実したモノにしたんです。

例えば、素振りはその内容を二つに分けました。前半は、同じ時間でいつもの二倍以上の回数を振れるように、より速く。後半は、ただ振り回すのではなく、一振り毎に、全身全霊の必殺の一太刀になるように、仮想敵を見立てて全力で振り抜きます。
相手は、仮想敵は、私が今まで太刀を会わせた中でも最強のあの男です。
でも、想像でしかない相手なのに、どうしても隙を見いだせません。一太刀を繰り出すだけでも、もの凄く疲労しました。…しかも、やっとの思いで繰り出しているのに、全ては簡単にいなされたように思えます。しかも、スモーカーさんの話では、あの男はまた一回りも二回りも強く・大きくなっているらしいんです。なんだか悔しいです。
…でも、負けません。いえ、たかだか一日で十回負けようが百回負けようが、立ち止まっているほどの余裕なんてないんです。例え想像上の相手であっても、すぐにでも三本とも抜かせて見せます。



昨日、想像上でロロノアに立ち向かった後、一晩考えて分かったことがあります。私の「強くなりたい」は明確な目的がなかったんです。全ての刀を正当な持ち主に戻したいという私の目的に誇りを持っていることに変わりはありません。けれど、「強くなりたい」コトに対する動機付けとしてはなんだか違うんだって思えてきました。

スモーカーさんはとても強いです。でも、あの時の「駆け上がって」という言葉、アレってつまり、スモーカーさんも誰かと競っていたんだということに昨日の夜に気付きました。
アラバスタで七武会を倒してしまった「麦わら海賊団」の船長。彼も強いです。彼の夢は「海賊王になる」コトだといつかの報告書で読みました。最初は唖然としてしまいましたけど、アラバスタで見た彼と七武会を倒した実力と、ひょっとしたら実現してしまうかもしれないっていう気になります。
そしてあの男。あの男は「世界一の大剣豪」になると言ってました。そして、確実に強く・大きくなり続けているようです。より高みを目指して、確実に歩みを進めているんですね。

私は考えました。最終的な目的は目的として、それ以外に「強くなる」ための目標っていうモノが必要なのではないかと。ならば、今の私の目標は、あの人です。あの人よりも強くなって、必ずあの三本の名刀を回収することです。そのためにも、もっともっと、頑張ります。



今日、アラバスタでの一件についての非公式な報告書をスモーカーさんから見せて頂きました。その報告書には、あの男が戦っていたと思われる場所にプリンをスプーンで掬ったかのような斬れ跡を残した巨石が転がっていたこと、「殺し屋」と呼ばれた悪魔の実の能力者は全身を鋭利な刃物に変える能力を持っていたにもかかわらず太刀によって討たれていたことが記されていました。
そして、その双方の斬り口は、どう見ても同一のモノとしか考えられないと結論付けられている検証結果が添えられていました。
私の知らないウチに、あの人は、また一つ、階段を登っていたんです。このままでは、差が拡がるばかりです。でも、負けません、あんな人には。
…明日からのメニューも練り直しですね。



訓練メニューの内容をもっと濃いモノに替えました。
筋トレを始めました。今までもやっていなかった訳ではないのですが、今のままでは単純に膂力で圧倒的に負けていると思いますので、もっともっと、せめて片腕一本だけで時雨を扱えるくらいにはならないと… ただ、あまり筋肉ばかりついてしまうと動きが悪くなってしまいますのでそこは気をつけないといけませんね。
軍曹さん達に相手をしてもらう手合わせも、もっと機会を増やしたいです。今までは軍曹さん達の空き時間をお借りして少しの間だけ相手してもらっていたんですが、これからはもう少し長く相手してもらえないかお願いしてみるつもりです。それと、一度に対する人数ももっと多くさせてもらえるように… 実戦、という訳にはいきませんので、せめて四〜五人を同時に相手にしてもキチンと捌けるくらいにならないと、三刀流なんて非常識な戦い方に対抗出来ません。



麦わら一味の足取りを掴めました!! ジャヤのモックタウン!! 無法者や海賊がたむろする「嘲りの町」へ進んでいるようです。…よりによってなんて所に…

すぐにでも乗り込んでいきたいのですが、今の戦力でジャヤに乗り込むのはスモーカーさんでもさすがに慎重にならざるを得ない訳で、そうそう簡単な話ではありません。取り敢えずジャヤに向かいつつ増援を待ち、その時々の戦力を見て対応を考えると言うことしか…

…でも、行きたい。あの男に挑みたい。私とのその『差』を測ってみたい。また「斬れない」なんてふざけたことを言うかもしれないけど、とにかくあの男の前に立ちたいッ…



明日にもジャヤに到着します。増援が間に合うならば数を揃えてジャヤへ突入。でも多分、増援は間に合いそうにもありませんから、その場合は麦わらの一味が島を離れてきたところを抑えると云うことになりそうです。情報ではログが貯まるに四日かかり、逆算すると後二日か長くても三日と云うことです。
でも、待てない。そんなに待てない。あの人がすぐ傍にいるのが分かっているのに、丸一日、ひょっとしたら丸二日以上もジッと待ってるなんてッ… すぐにでも、一人ででも乗り込みたいッ。少しでも早くあの人に挑みたいッッ…

明日、ジャヤについたらスモーカーさんにかけ合ってみよう。ジャヤへの斥候の潜入を進言し、自分が志願しよう。すぐにでも会いに行こう…



著者注:ココで云う『日記』は航海日誌(log)ではなく個人的な日記(private diary)のコトです。
ちなみに、コレ、オチとかないです。…ダメじゃん(汗)

- 後書き -

ということで、初書きのSSです。つか、SSもどきですな。ここのところweblogはやってるんで、まずは書き慣れている体裁でいきましょうと。たしぎ曹長の口調や日記などでの文体など、かなり怪しいものではありますがそんなに大外しはしてないつもりです。

私は「ゾロ×たしぎ」派ですのでオフィシャルにもそうなって欲しいという願いを込めつつ、この話はゾロに焦がれるたしぎ曹長の『気持ちのうつろい』みたいなモノを表現してみたつもりです。もっとも、著者が野郎ですから『女性でありながら女性を捨てようとしつつ、そんなモノにも関係ない強さに惹かれつつある』なんつー心情をどれだけ表現出来るモノか(笑)

ちなみに、思いっきりブツ切りの尻切れですが、「原作本編に絡むように」ってのを意識して書きましたのであそこまでしか書けないんです。もちろんオチがないのを誤魔化すためってのもデカいんですが(爆) もし本編で、ジャヤでの逢瀬があったならばそのようにハナシを持っていけますし、なければ、海軍が追いつく前にルフィ達がジャヤを離れたってコトに出来ますし。

さて、本編はどうなりますやら。



n-yoshi様本当に有り難うございました!

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2002/11/3