No.391/ルゼル様


それは始まりだった


始まりはグランドラインのある島でおこった
ルフィ一行は、いつも通りログのたまるのを、じいっと待たずに町に出て各自羽を伸ばしにいく
ルフィは船を下りると速攻「飯屋!!」と叫んで町のほうへもうスピード
ナミとロビンは2人でショッピング
サンジはたらふく食べる船長のために食材集め
チョッパーは生傷が絶えない仲間のために、包帯やらカットバンやらの補給
ウソップは船番and新しい武器の開発
そしてゾロは切れかかっている刀を手入れするためのオイルと、酒場を探して町にむかった

ゾロは町につくといしょに歩いていたチョッパーと離れ、自分のカンをあてにし、武器屋を目指して歩き出す
途中何度も同じ場所を行ったり来たりしたり、行き止まりにぶち当たれば、回れ右をして方向をかえながら歩いていた
レンガ造りの道を適当にくねくねと曲がって行く。人気のいない場所へとゾロの足は歩いている
そしてまた、行き止まりに出会う

 「ち、またか・・・・て、てめーは!!」

振り返ると何故か急に顔色が変わる。
なぜここにあの女が。ゾロが回れ右をして振り返ると10m先にたしぎが立っていた
どうやらいつのまにかゾロをつけていたらしくて、チャンスを待っていたようだ

たしぎの手がゆっくりと刀を抜く

 「さあ、もう今日という今日は逃げられません。刀を抜きなさい、ロロノア」

得意満面な顔をするたしぎそれに対してゾロは、手をひたいに当てて、深いため息をハアーとつく

 「お前が俺を追ってくるその執着心、感心するぜ。今度は気配を消して俺をつけてくるとは」

行き止まりの壁にもたれて腕を組む
それに対して、フフッと勝ち誇ったように笑うたしぎ

 「スモーカーさんに特訓していただいた成果です。スモーカーさんのご厚意に答えるためにも、今日こそは、『和同一文字』回収します!!」

ゾロはたしぎの後ろにいる何かの気配に気づき、そしてたしぎの向こう側にも聞こえるように叫ぶ

 「おい、パクリ女!お前は自分の気配を消しながら、他の人の気配を感じることはできねーみたいだな」

 「えっ!!」

振り返るたしぎ、だが、そこには何もなくただ、さっき自分が歩いてきたレンガ道とそれと同じ
レンガで造られて家が続いていた。ゾロを睨み付ける

 「ロロノア何を言っているのです?だれもいませんよ」

怒ったような口調だ
自分がからかわれたと思い、鞘の握る手に、力が増す。
ゾロはというと、たしぎにかまわず向こうの相手に話しかける

 「てめーら、いい加減にでてきたらどうだ。そっちから出てこねーんじゃあ、こっちからいくぞ」

いつもより低い声が周りの家々に反響して、余音を残す
すると、どうだろう。小さな路地から、ざっと見渡して30人の男達がどこからともなく現れたではないか、驚きの顔を隠せないたしぎ
そんなたしぎの横までくると、ちらりと顔を見て訪ねた

 「てめーの知り合いか?」

いいえと首を振る
そうかというと30人の男達に、おい、といって聞く

 「てめーらは、どっちをおってきやがった?俺か?それともこいつか?」

親指で自分、そしてたしぎを指す
男達の中から、ゾロの返事に答えるために、一際でかい男がなんとも不気味な笑顔で

 「ボスは2人とも連れてこいだとさ、おとなしくついてこれば、痛い目みねーですむが・・・・・・
 世界一、人さらいがうまい俺様が、世界一強くて、かっこよくて、ハンサムな俺様が
 ボコボコにやられるにと、素直についてくるの、どちらがいいかえらばしてやろう」

なんせ俺は優しいからな、かははははは、と、得意そうにわらったが、ゾロとたしぎはそいつを無視して話を進めていた

 「で、お前は何人やれる?」
 「半分ぐらいですね」
 「おし決まりだな」

そこでやっと自分が無視されたと気づいた男が

 「て、おい、てめーら俺様の話を聞いていたのかよ!俺様を無視するとはいい度胸じゃねーか
 よし、野郎どもあの命知らずのやつらをたたきのめせ!!」

すると男の号令で、いっきに飛びたたってくる手下達、ゾロのたしぎも素早く鞘から刀を抜き、前からくる敵にかまえるが、何か上から降ってくると上を見上げると、同時に落ちてきた物の重さによって、地面に倒れる二人。それは鉄製の網だった

 「ひっかかった、ひっかかった、よし今のうち全員マスク装備、そして撃ち込めネムネム弾を!」

踊りながら、部下に命令する
黒い筒の先がゾロたちにむけられ、ドカーーーンと、黒弾が二人のすぐ近くに撃ち込まれる
カランと音がしたと思ったら、シューシューといって白い煙をまき散らす
白い煙が眠気を誘う、それは速攻性の物だったらしい、たしぎがすぐに倒れ続いてゾロが倒れた


           +++++



あれからどのくらいの時間がたったのか分からないが、ゾロが気が付いたのは鉄格子の檻の中で横たわっていた
明かりと言えば、二つのランプぐらいで窓は一つもない。体はまだだるい。そして起きようとしたと時、やっと自分が手は後ろで縛られ、胸と体は太いロープで何十にも巻きつけられていることが分かった

(そういや、あいつは…)

ガバッと上半身だけを起こし、腰をひねってあたりを見渡す
たしぎはゾロの斜め後ろに倒れていた。まだ意識は戻っていない
たしぎもゾロ同様ロープで縛られていた
バランスをとりながら立ち、たしぎに近づくゾロ

 「おい、お前。大丈夫か?」

返答なし。

規則正しく呼吸がされており、別に眠っているだけで見た感じ異常はない。
ゾロはふぅーっと息をつくと、たしぎの顔が見られる位置にドカッと座り、鉄格子にもたれた

しばらく見ていると、ゆっくりとたしぎの目が開いた
2、3三回目をパチパチさせて目の前にいるゾロを見る
そして目の前の人物がゾロだと判断するやいなや立ち上がり

 「ロロノア・ゾロ!勝負しなさい!!」
たしぎはゾロに詰め寄る

今、十分がおかれている状況を、全く飲み込めていない
たしぎに向かって深いため息を付く

 「お前そうとうトロいな、刀もねぇし縛られるっつうのに。何が勝負だ、できるかっつうの。」

呆れた声でたしぎに言うゾロ

そこで初めてたしぎは自分が縛られていて、普段海賊を閉じこめていて決して入ったとのない鉄格子に自分が入ってることにようやく気づく。

 「ロロノア、ここが何処だか分かりますか?」

さぁな、と首をふる

 「ふぅ。せめて場所さえ分かっていれば、連絡を取って応援が来てくれるのに…」
 「それは俺にとってあんまりありがたくねぇなぁー。応援っつったって海軍だろ?」
 「ええ、はい。そうですけど…。私にとっては一石二鳥ですしね。」

たしぎばゾロを横目で見る
ゾロはふんっと鼻を鳴らすゾロ

 「俺はそうやすやすと捕まらないぜ。」
 「そうですよね。いっつも逃げてばっかりだから。」

プッチーン

ゾロの欠陥が切れたような音がした

 「おい、てめぇ。さっきのと言葉聞き捨てならねぇ。取り消せ!!」

大声でライオンが牙を出したようにたしぎに向かって叫ぶゾロ

 「だったらなぜ勝負しようとしないのです。私はローグタウンを出てから一度もあなたと剣を交えたことがありません。」

口どもるゾロ

 「そ、それはてめぇが…」
 「女だからですか?それともあなたの親友に似てるからですか?」

(そうやって重ねられるくらいなら、いっそあなたの剣で死にたい…)

(いったいこれ以上どう説明しろってんだ。お前を傷つけたくねぇのに…。いやぁ早いが海軍相手に言える分けない)

たしぎの言葉を最後に黙り込んでしまった二人
しばらく沈黙が続くと、そこに4人の男がドアを開けて入ってきた

 「おい、今からボスの所まで連れってやる。お行儀よく、おとなしくしておくんだぞ。カハハハハ!」

さっき30人の集団をまとめていた男がゾロとたしぎを見下したように言う
そしてもう一人の男がカギを開け、3人がかりで2人をその鉄格子から出しその場を後にした

ゾロとたしぎはその4人に男に連れられてある一室に案内された
そこは豪華な作りのシャンデリアが天井につるされており、床には高そうなじゅうたん。
そして部屋の中央には長く大きなテーブル、端には椅子が一脚づつあり、手前はだれも座っていないが、奥には約25歳くらいの茶髪の男がたしぎの顔を見てニコニコと笑っている
たしぎは椅子に座らされ、ゾロは赤いじゅうたんの上に座らされた
男はゾロとたしぎを座ったまま確認すると

 「手荒いまねをしてすまないね、たしぎさん。」

茶髪の男が指をパチンとならす
するとさっきたしぎ達が入ってきたドアからワインを2本持った髪の毛が赤いメイドがやってきた
赤ワインを茶髪の男の方に持っていき、コルクを抜いて空のグラスにつぐ
もう一本の白ワインのコルクを抜き、ポケットから出した小瓶の液をワインの中に入れる
そしてそれをたしぎの目の前にあるグラスに注いだ
注ぎ終わるとメイドは出ていった

ワインを一口のみ、茶髪の男はニコニコと嬉しそうに笑いながらたしぎに向かって話し出した

 「今日、あなたをここに読んだのは、言うまでもありません。この僕と結婚するために連れて来たのです。僕は以前からあなたのことを知っていましたし、ずっとあなたに思いを寄せていました。」

 「「はいいっ!!?」」

ゾロとたしぎが同時に発した単語
物の見事にそろっていた
そして二人の顔はひどく驚いている
理由は一つ。まさかこのような展開なろうとは思っても見なかったからだ
ほかの者たちもこんな手荒いまねをして連れ来た女に、まさか好きだと告白するとは思いもせず、みんな驚いた顔をして茶髪の男を見ている

 「あの…私をからかっているのですか?」

たしぎはさっき茶髪の男が自分に向けた言葉がどうしても信じられず、からかっていると言う言葉を使って聞きなおした
それもそのはず。まだ体もロープでしなられていて出てきた言葉が憎んでいるとかならまだしも、ずっと思いを寄せてきた、などと言われることはないと思っていたからだ

すると茶髪の男は叫んで答える

 「僕は本気だ!!からかってなどいない。本気であなたのことを愛している。」

さっきまでのニコニコ顔が消え、真剣な眼差しに変わった
茶髪の男はどうやら本気で言っているようだ
だが、いくら真剣に言っていてもついさっき合ったばかりの男、まさかいい返事が返ってくるはずもないとゾロはおろか、雇われた男達でさえそう思っただろう
実際たしぎもこんな訳の分からない結婚話、冗談じゃない!
3秒ほどどう断ろうかと考えた後、内容を言葉に表す

 「お気持ちは嬉しいですが、あなたもご存じの通り私は海兵です。今は私の後ろ座っているこの男、ロロノア・ゾロを捕まえるために毎日を生きています。ですから、せっかくの申し出ですがごめんなさい。」

たしぎの返事を聞くと、すっと茶髪の男の顔から笑顔が消えた。
椅子が倒れるのも気にしないで、ガタンと音をたてて立てると、たしぎの横までドカドカと歩いていき、自分の方に向かせた
そしてめがねを外し、あごを持ち上げる
その茶髪の男の顔は冷酷で慈悲心がないような表情だ

 「君には僕を選ぶしか選択はないんだよ、たしぎ。」

茶髪の男は遠慮なしにたしぎのなめらかな肌を触る
ゾロはどうしてもその茶髪の男がたしぎの顔に触っているのが気にくわないらしい

 「おい、自己中男。そいつを連れてきた理由はてめぇがそいつの事を好きだからだろ?だったらなぜ俺まで連れてきた。俺の首がほしいならその場で殺りゃあ良かったんだ。」

ゾロの思惑通り、その茶髪の男はたしぎのあごを持ち上げていた手をはなした
そしてゾロの方を向くと、さっきたしぎに向けた顔以上に冷酷な表情になった

 「いや、理由は簡単だ。僕の妻になる人が必死になっている海賊はいったいどんなもんかと一度拝見したいと思ってさ。」
 「こっちはいい迷惑だっつうの。ただでさえこの女が何度も勝負しろってうぜぇのに…」

そのゾロの言葉にたしぎが言い返す

 「よく言えますね。ローグタウンで勝負したとき以外に一度もしていません。」
 「かたぁついたんだからする必要ねぇだろ。」
 「ついてません!私は一太刀もあびていません。」
 「あびてないくても力の差はあきらかだっただろ。」
 「くっっ。だ、だからといって今もそうとは限りません。」
 「気配も感じ取れねぇトロ女に俺が負けるわけねぇだろ。」
 「私の気配を感じ取れなかった鈍感男に言われたくありません。」
 「あぁ?なんだとこのあまぁ」
 「そっちこそなんですかっ!」
 「さっさとその男と結婚して海兵止めちまえ!それが世のため俺のためってもんだぁ。」
 「あなたに言われなくても結婚します!どうせ私には選択権がないのですから…」

今までゾロとたしぎの言い争いを黙って聞いていた茶髪の男がたしぎの言葉を聞いて割り込んできた

 「と言うことは、これで君は僕の物になったと言うことだ!さぁ、たしぎ!誓いの杯を交わそう!君はこの白ワインで、僕はこの赤ワインで…」

たしぎの目の前につがれている白ワイン
それはさっき、自分の目の前であきらかに何か薬を入れた物である。
これを飲むと言うことはこの後自分がどうなるか分からない
少し戸惑っているたしぎに茶髪の男は

 「大丈夫だ。毒など入っていないさ。どうだね?飲む気になったかね?」

ゆっくりと目を閉じる
そして30秒後、はいと返事をし、その後言葉を続けた

 「あの、一つお願いがあります。」
 「何だね、なんでもほしい物を言ってごらん?」

甘い口調で言う男

 「あなたと結婚して、ここでとどまると言うことは私は海兵を止めると言うことですよね?でしたら最後に自分の刀でこの男、ロロノア・ゾロをしとめてはいけないでしょうか?」
 「あぁ。別に好きにしたらいい。どうせこの男には消えてもらうつもりだったからね。君と僕の結婚式をこの男の首で払おうかとずっと思ってたところだよ。でも念のために君に刀を渡すのはこのワインを飲んでからだよ。」

ニコニコ笑顔でそう言うと、茶髪の男はたしぎのロープをほどいた
たしぎは自由になった手でワインのグラスを持つ
そして一気に飲みほした
男から4本の刀から自分の刀、「時雨」をもらい縛られているゾロの方へ向かった

 「安心して下さい。あそこにあるあなたの刀はちゃんと私が手入れしますから」

皮肉めいた口調で言った

 「はっ、そりゃありがとよ。」
 「それと一発で仕留めてあげますから。楽に死ねますよ。」
 「細心の心遣い涙が出るぜ。」
 「剣士としての礼儀、前から行きます。」


 「・・・・・・・・・」

最後にたしぎはゾロの横に立ってゾロを見張っている4人の男に向かって言う

 「あの、血が飛びますから、離れてた方が言いと思いますよ。」

たしぎは4人の男達をゾロから離れさせ、自分は鞘から刀を抜いた
シャンデリアの光が、よく磨かれている刃にあたり反射して、向こう側の壁にあたって薄く光っている

よろっ

さっき飲んだワインの薬が効き始めたのか、たしぎは少しよろめいた

・・・・もう時間がない・・・・

神経を集中させ、しっかりと時雨を構え、そして…

すぱっ!!!!

パラパラパラパラ

ゾロを拘束していたロープだけが切れた

そうこれは、賭だった。1つ失敗したらもう全部ダメになると言う

『危ない架け橋』

ゾロを挑発したのも、怪しまれずにしるため
自分の刀を使いたいと言ったのも、自分とゾロの刀の在処を知るため
4人の男をゾロから遠ざけたのも、全部この男、ロロノア・ゾロを助けるためだった。

たしぎは薬のせいで体に力が入らず、かまえていた刀をじゅうたんの上に鈍い音を立てて落とし、そのまま自分の身体はゾロの方へ倒れ込んでしまった
たしぎの体はゾロの鍛えられた腕に抱き留められる
ゾロが心配そうにたしぎの顔をのぞき込む

 「おい、大丈夫か?」

 「フフッ。それがさっきまで自分を殺そうとしていた者にかける言葉ですか?」
 「殺そうとした?はっ、よく言うぜ。全部芝居だったんだろ?」

驚いたように目を見開く

 「いつから気が付いてたんですか?」
 「ばぁーか。最初っからだよ。てめぇはいっぱしの剣士だ。刀を持っていない相手を斬るなんてしねぇよ。」

フフッと笑い、首を横に振る

 「まだまだ半人前です。気合いで最後まで持たせることができせんでし…」

たしぎは言い終わらずに目を閉じてしまった
慌ててゾロはたしぎの呼吸をみる
ふぅ、と安堵の息を吐く
死んではいない。ちゃんと息をしている
ゾロはたしぎを抱きかかえ、たしぎの婚約者になるはずだった茶髪の男に勝ち誇った笑みを見せる

 「残念だったなぁ。こいつが俺の手の中に入ったからには、間違ってもてめぇーなんかの嫁にやさせやしねぇーよ。さて、どうするおぼっちゃま、このままおとなしく俺達を返して自分たちも 無傷でいるか、それともそいつらに命令して俺を止めてみせるか?」

ふてぶてしく言い放つゾロ
茶髪の男は叫んだ

 「どうしてたしぎを助ける!!!何のメリットがある!!君らは敵同士だろ!?なぜ!!?」

 「ただこいつに貸しをつくりたくねぇだけだ…」

茶髪の男は額に欠陥が浮き出ている

 「たしぎは僕のもだぁーーーー!!!!!誰が貴様なんかにくれるものかぁ!!!」
 「だったら、力づくで俺の手の内からこいつを、奪ってみな!!」

悪のえみを見せるゾロ、たしぎを抱きかかえ自分の刀のほうへと歩き出す
それを阻止するべく、雇われた男達がゾロに武器を持って襲いかかるが、刀なしでもそこら辺の海賊に負けない男。たしぎを抱きかかえたまま、足だけで男達を蹴り飛ばしていく
まあ、サンジみたいにコンクリートの壁をぶちこわすではないにしろ、確実に相手のことを気絶させられるぐらいの、威力はある。いとも簡単に自分の刀が置かれていた場所までたどりつく
たしぎを軽々と片手で持つと、もう片方の手で自分の刀をあるべき場所へと戻す
と、そこにさっきたしぎを強制的に自分と結婚させようとした男が刀を持ってゾロにちかずく
だが、その刀を持つ手はガタガタとふるえ、剣先がぶれている

 「た、たしぎを置いて行け、さもないと君を殺すよ」

カタカタとなる刀

 「その程度の腕で俺は、殺せねえ」

茶髪の男はなおも言い続ける

 「どうしてだどうして君はたしぎを助ける??たしぎだってそうだ!どうして君を助けたんだ!?君たちは敵同士じゃないか!!」

ちらりとゾロは抱きかかえているたしぎみる

 「こんなところに置いて帰ったら目覚めが悪りぃだけだ」

ぼそりと茶髪の男がゾロにむかってつぶやく



 「いくらだ・・・・・」

 「あぁ?」

茶髪の男が何を言おうとしてるのか分からない

 「いくら出せばたしぎを僕にゆずってくれる?」

とんでもないことを言い出した
男はたしぎを金で買うつもりらしい、ゾロが冗談だと思い男の目をみると、その目は笑ってなどいない、ましてや冗談などをいっているときの目とも違う

そう、茶髪の男は本気でたしぎを買い取るつもりなのだ 

 「てめぇ年は?」
 「26だ」

ハアーと大きく息を付くと真剣な眼差しで茶髪の男に話し始めた

 「てめーは俺より多く生きてんのにまだ分かんねぇみてーだな。金は、多くのことを可能にすることができるが、世の中金でもどうにもならねぇ事があるんだよ。1億積まれようが2億積まれようが、俺はたしぎを渡すつもりはねぇ。」

言葉がふと消える…

 「それに…」

今までの目つきがやさしくなり、暖かく包み込むような瞳でたしぎを見ると、白い歯をニッと見せる。

 「それにこいつは俺専用の海兵だ。他の男に渡す気なんかさらさらねぇよ。」

大胆不敵な言葉に男は一瞬呆然とするが今まで分からなかったパズルのピースがもう一つのピースにくっついたようにあることに気が付いた

 「もしや…君はたしぎのことが…」

 「ばっ、違う俺はただ、そう、ただこいつがトロくせぇえのに海軍やってて心配して…いや違う、誰がこんな女心配するかっ!いや、その…なんていうか…。なんて説明すればいいんだ?」

1人勝手にあせるゾロ
その近くではゾロに姿に必死で笑いをこらえている茶髪の男、だがゾロが1人であせればあせるほど、我慢の限界で、そしてとうとう

 「ウハハハハハハハハハハ!!!!」

自分で言って自分で墓穴をほっているゾロに思わず声を出して笑ってしまう茶髪の男
ついさっきまで自分に説教していた人物とは思えないぐらいに一人で勝手に焦っている
急に笑い出した茶髪の男を怪訝そうに見る

 「何だよ急に…」
 「いや、悪い悪い。君が小さな子供に見えてしまってね。それが少しおかしかったんだよ。気を悪くしないでくれ。」

苦笑する茶髪の男に苦虫をかみつぶしたような顔をするゾロ
おもしろくない
んじゃぁな、と言って背を向けるゾロを呼び止める

 「せっかくだから酒でも飲んでいけよ。けっこういける口だろ?大丈夫普通の何も入っていないワインをお出しするよ。」
 「せっかくだが、遠慮する。仲間も待ってることだし。それに…」

あごですやすやと寝ているたしぎを指すと

 「それにこいつを海軍に送り届けねぇといけねぇしな。」

と言うと世話になったなと言ってその屋敷から出ていった





20分後…

―― しっかしまぁこれからどうしたもんだ。送り届けると言ったもののこいつの船が何処で停泊しているのかも分からない。いっそこのままこいつを鎖にでもつないで船に乗せちまうか ――

ふと頭の隅っこからそんなばかな考えが浮かんでくる

―― ばかばかしい。そんなことをしたらこいつの夢を俺が壊しちまう ――

と、そこに聞き覚えのある低い男の声がゾロの背をつつく…

 「ロロノア、俺の部下をどうするつもりだ。」

振り返るとやっぱりそこにはたしぎの上司、スモーカーが仁王立ちになって立っている
右手はしっかり十手を握っている、いつでも戦闘に入れる体制だ
緊迫したふいんきが一瞬あたりをつつむが、それをさらりと流したのはゾロだった

 「どうもしねぇ。ただ海軍に送り届けようと思っただけだ。ちょうどいい。てめぇの部下、たしかに返したぜ。」

と言うと、たしぎを壁にもたれさせた
去ろうとしたゾロにスモーカーが言う

 「部下を助けてくれたことには礼を言うが、それで貴様を見逃す理由にはならねぇ。」
 「かてぇ野郎だぜ。そういや言い忘れたがそいつはよく分からん薬を飲まされて寝ちまったんでな。俺を捕まえる時間があるんだったら、早く医者に見せた方がいいと思うがな…」

しばらく両者ともにらみ合っている
びびたりとも動かなかった2人だが、先に動いたのはスモーカーだった
右手を十手から外す
たしぎの方にふっと目線を下ろし、近づいたかと思うと、ドカッと肩に担いだ

 「俺が見たのはロロノアじゃない。ロロノアによく似た男だ。」

そう言うとスモーカーはたしぎを担いだままゾロとは違う道に向かって歩き出した
ゾロは、その姿を見てふっと笑うと、当初の目的だった刀を磨くためのオイルを求めて道を歩きだした

- END -




コメント

最後まで読んでいただいてありがとうございます
今思い返しても全然山あり谷ありがない文章ですね
はははははははは(笑って誤魔化すな!)
では、そういうことで書け逃げ!!



ルゼル様本当に有り難うございました!

2003/03/23